ワークライフバランスのチェックから見えてくるもの

標準

● ワークライフバランスを整えるために

 ワークライフバランス(WLB)の推進が盛んになっており、現在では病院や自治体が中心となって推進委員会を立ち上げ、積極的に取り組んでいる所もあります。
 ワークライフバランスを整えるためには、個人だけの運動や取り組みだけでは難しいことが多く、やはり病院全体かあるいは推進委員全体の運動として取り組むことが望ましいです。
 「より長く働き続けることができる仕組み」、将来のキャリアデザインを描くことができる仕組みづくりが盛んにおこなわれ始めています。

● 仕事の生産効率を高めるために

 仕事好きで知られている日本人。「24時間働けますか」という歌もありました。ところが、「仕事の生産効率」労働時間当たりのGDPは、アメリカの100を基準とした場合、ルクセンブルクが一位で143、相次いで高いのが北欧4国、日本は71で22位です。
 なぜこんなに仕事人なのに効率が悪くなっているかといえば、「残業が多い」ことも一因として挙げられます。つまり、長時間働き続けていることでかえって効率が悪くなっているということです。過度な労働による疲労の中、質の高い看護を行うのは至難の業です。
 
 さて、ワークライフバランスを整える方法の一つに、「仕事の効率化を図る」ことも上げられます。看護師は「聖職」のイメージがいまだに根強く、自分の生活を優先することや定時で上がることを良しとしないところがあります。実際、看護師の勤務時間は1日10時間を超えています。これはパートタイムの方も含めていますから、実際のところはさらに長時間働いていることになるでしょう。
 仕事の効率を向上させるためには、残業時間をできるだけ減らし定時に帰ることができる職場風土をつくることが大切です。子育てを抱える看護師さんはすっきりと定時で終わる方が多いです。でも個人で工夫を凝らし努力するには限界があります。病院全体での取り組みが大切です。院外処方選を増やす・採血は検査室で・看護記録は時間内に書いてしまうなどの工夫を全員が行うことで、誰もが定時ですっきりと終ることが可能になります。

● 定時で追われる職場風土作り

 勤務経験3年未満の看護師にとっては、勤務時間の中で「看護計画の立案」をするための時間が大きく締めているといいます。病院内でひな形を作ってしまい、それを若干修正するだけで計画を素早く立てることができるような工夫をすることも効果的です。
 また、バレーでいえば「リベロ」のような役割として「リーダー」を決めてその人の仕事量を軽減します。そしてそのリーダーが、作業が遅れている人や残っている仕事などを調べて補佐に入ったり、残業しそうな人を早く終わった人がサポートしあう職場風土を作っていくこともできます。
 やるべきことをしっかりと時間内で終え、プライベートを充実させることで明日のやる気やモチベーションを高めていきます。みんなで残業がなくなるよう互いにサポートし合い支え合う、そういった風土作りが離職者を減らす第一歩となります。

● 働きやすい風土づくりが離職率を減らす

 実際に「働き続けられる環境づくり」に積極的に取り組み、残業をできるだけなくする職場改善を行った結果、離職率が大幅にダウンしたという病院があります。残業が少なくなり、子育てや介護の必要な看護師への支援が手厚くなることで辞める人が少なくなります。協力し合う体制ができることで人とのつながりも暖かいものとなり、より魅力的な職場となるでしょう。
 辞める人が多い職場は、一度にベテラン看護師が3人も辞めていく場合があります。そうすると補充まで残った人が大変なことに…。入ってくる人も新人3名だったりすると教育のために時間と労力がどんどんかかり、一人にかかる負担が倍増してしまいます。するとさらに離職者が増えるといった悪循環が起こってしまいます。
 働きやすい職場づくりが離職率を減らし、離職率が低い職場はさらに働きやすい職場になる、好循環が生まれることになります。人材を大切にする職場はより評価が高くなり魅力ある職場となっていきます。

● 超法規的な勤務体制に取り組む病院も

 「1か月1時間勤務でも可」という、超法規的な働き方を実現している病院もあります。子育て中の「潜在看護師」になってしまう看護師が利用しています。少しでも現場とのつながりをもち、子育てがひと段落したらいつでも復帰可能な制度です。
 そのほかには定時終了に熱心に取り組み、非常勤ナースと常勤ナースの勤務可能な時間帯を事前に正確につかみ、連携をスムーズにしていくため、細分化されたシフトを作っている病院もあります。

● 一人で戦わない

 「転職をする」のは簡単にできます。けれども転職した先が今より条件がいい病院とは限りません。実際のところは前の職場の方がまだよかったと感じる人が半数以上です。病院全体で看護師不足が起こっているのですから、今より良い職場どころかさらに人間関係が悪化しているところや、職場環境が厳しいところになってしまうのは仕方がないことかもしれません。
 あなたは、職場で行き詰ったり悩んだりした時に相談できる人がいますか?
 看護師さんの多くは守秘義務もありますから同僚や上司に相談する方が多いようです。自分ひとりでため込まず相談してください。同じ職業だけでなく違う職に就いている友人に相談することも大切です。幅広い意見を聞きながら、いろんな角度から働き方を考えることも大切です。誰かに相談し助けをこうことも才能の一つです。
 離職や転職をを決意する前に、職場改善や自分の働き方をちょっと見直すことで「前よりずっといい職場」にしていくという道もあります。大変ですが自分のためだけではなく同僚のためにもなります。一人で戦わず、まずは周りの人と話してみましょう。意外な道が開けるものです。
 
★ 働き続けることができる職場づくり 座談会
⇒ http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02741_01

★ ワークライフバランスの推進(千葉県の例)
⇒ http://www.cna.or.jp/jigyou/

★ ワークライフバランス 働き方を見直す
⇒ http://j-net21.smrj.go.jp/know/s_hiroba/shigoto_18-2.html

★ 書籍『ナースの働き方 ハッピーガード』
 MCメディカ出版